2013年10月14日

反戦平和を叫ぶことが戦争を呼び込む

沖縄県は、9月11日に東アジアの平和と安全保障をテーマとした「万国津梁フォーラムを開催しました。私は出張のため会場には行けませんでしたが、米国や中国、台湾、県内の専門家が意見を交わし、戦争の犠牲など歴史的な経験に根差した平和を求める沖縄の「ソフトバワー」を発信することの必要性を確認したと報じられております。

はっきり言って、私は「言葉で県民を酔わせるだけなら、百害あって一利なし」と申し上げたい。もちろん、悲惨な戦争を体験し、戦争の悲惨さを語り継いできたからこそ、その歴史や文化を背負っている県民には、平和をつくる力がある、と言いたいのでしょうが、それではなぜ、中国政府は尖閣諸島周辺における威嚇行動を一向にやめようとしないのでしょうか。これこそまさに、平和を愛する沖縄県民に対する無礼千万な行為ではないでしょうか。

「沖縄タイムス」や「琉球新報」だけを読んでいては、臨場感はほとんど伝わりませんが、「八重山日報」など現地の新聞では、尖閣諸島周辺における中国の威嚇行動がリアルに報道されています。

「中国公船『拿捕』示唆し威嚇」
「中国船 また威嚇行動」
「中国船、また地元漁船追跡 常態化する領海侵犯」

これらの記事は、中国政府の船が、我が国の領海に侵入するだけでなく、日本の漁船を拿捕しようとする威嚇行動をとり続けていることを意味しています。従来、中国の公船は国家海洋局や農業部漁業局の監視船でしたが、中国海警局に一元化されました。中国側の認識では、警察の船を出動させている、ということです。つまり、いつ何時、沖縄の漁民が拿捕されて中国に連行されるかわからない状況となっているのです。

昨年は、フィリピンが領有権を主張する南シナ海のスカボロー焦で中国の公船とフィリピンの軍艦が1か月以上もにらみ合いを続け、武力衝突は必至とまで報じられました。

過去中国がインドやベトナムとの開戦に至ったときの状況とまったく重なっていたからです。そのギリギリのところで中国の行動を押しとどめた背景には沖縄に駐留する海兵隊の存在が大きいことは言うまでもありませんが、何があっても沖縄に米軍は駐留し続けると考えるのは甘いと思います。

沖縄のメディア報道による米軍人・軍属に対する悪しき印象操作、プロ市民・左翼による米軍人バッシング、米軍当局による軍人・軍属への外出・飲酒制限、米本国債務上限問題に絡む軍事予算の歳出削減、そしてオバマ大統領のAPECや東アジアサミットの欠席によるアジアにおける米国の指導力低下など、今、沖縄を包む安全保障環境は、不安定極まりない状況で、とても「沖縄の平和力」などとのんきなことを言っている場合ではありません。

中国はすでに、フィリピンから米軍が撤退した後、フィリピン近海の無人島や岩礁に30以上もの構築物を設置し、軍事的な橋頭保としております。沖縄から米軍が撤退することになれば、当然沖縄の周辺海域で同じことをするでしょう。

中国の脅威と対峙し続けているフィリピン他ASEAN諸国は、南シナ海での衝突回避に向け、国際法的な拘束力を持った「行動規範」の策定を主張しております。ASEANと中国の首脳会談において、双方が策定を推進することで合意したと報じられておりますが、中国の譲歩ととるのは早計だと思います。

「平和主義者が戦争を起こした」は、イギリス首相チャーチルが第二次大戦を回顧して語った言葉です。チャーチルにしてみれば、第二次大戦はやらなくてもいい戦争であったが、あのような大戦争になってしまったのは、「戦争反対」と叫ぶ連中がいたからだ、といいます。

どういう意味か、と申しますと具体的には、ヒトラーを増長させてしまったのが「平和主義者」なのだ、ということなのです。

ドイツが第一次大戦の敗戦によって失い、非武装地帯とされた領土、ラインラントにヒトラーがいきなり軍隊を進駐させた事件があります。この行動は、講和条約違反であり、隣国フランスに対する宣戦布告ともとれる行動でした。当時の軍事力は圧倒的にフランスのほうが強大で、もしフランス軍が動けば簡単に制圧できたであろうと言われています。しかし、当時のヨーロッパは大戦が終わったあとの厭戦ムードが充満しており、軍事を語れば選挙には絶対に勝てない状況でした。だから、ヒトラーが講和条約違反をしても、フランスはまったく動けなかったのです。ヨーロッパ各国が平和主義に縛られていることをヒトラーは知っていました。その後もヒトラーはヨーロッパ中の黙認のもと、ザール進駐、オーストリア併合をドイツ兵を一人も傷つけることなく成功しました。そしてその頃には、ドイツ軍は強大化していて、手が付けられない状況になってしまっていたのです。

頻繁に尖閣諸島周辺に中国の公船が領海侵犯するようになったのは、石原都知事が東京都による尖閣諸島購入宣言をしたからだ、とか野田総理が国有化したからだ、とその原因をなすりつけようとする声を沖縄ではたくさん聞いてきました。

本当にそうですか?

私は国有化しようがしまいが今のような状況はいずれやってきたと思います。

都知事や総理を批判する人たちは、万が一にも、中国軍が尖閣周辺海域を展開し、いよいよ上陸するようなことがあったならば、いち早く日米両政府に、一切の軍事行動をとらないよう、訴えることでしょう。

「あなたたちのせいで、沖縄が戦場になる」

と叫ぶことでしょうが、航空自衛隊のレーダーサイトしか配備されていない先島はどうなるでしょうか。「与那国や下地島に、もっと早く自衛隊を誘致していればよかった」と嘆いてももう遅いのです。

今沖縄を護るために必要なことは、現実味のない「沖縄の平和力」などという言葉に酔うのではなく、集団的自衛権の行使や、防衛費の増額や、憲法9条の改正によって、着実に自主防衛を固めていくことなのではないでしょうか。



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Posted by タツロー at 16:32│Comments(0)安全保障
 
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